日本語と韓国語は、言語的には近いですが、直訳で済むほどの関連性はありません。
この記事では、日本語と韓国語、それぞれを翻訳する際に気を配るべきポイントを解説します。
日本語と韓国語の翻訳時に気を付けるポイント
私自身が講師業の傍らで翻訳をするときに気を付けているポイントについてまとめました。
韓国語から日本語への翻訳は行間を読むこと
日本語は一人称を端折ったり、語尾まで完全に言わなかったり、とかく行間を読むことが多いです。
対する韓国語にも、似たような用法はありますが、どちらかというと、最後までキッチリ言い切ることが多いです。それどころか、何かを言おうとするたびに、ニュアンス系の単語が付加されていく傾向があります。
たとえば次のようなケース。
- 물 주세요 ⇒ 水ください
- 물 좀 주세요 ⇒ 水ください
上の2フレーズは、まったく同じ文章ですが、좀と入ると、どことなく遠慮がちに聞こえるのが特徴です。回りくどく伝えると丁寧に聞こえるのは、英語などにも共通する特徴です。
試しに同じフレーズを次のように訳してみましょう。
- 물 좀 주세요 ⇒ 水ちょっとください
私の感覚としては、とたんに翻訳臭がただよう文章となってしまいます。忠実に訳すかどうかも大事ですが、私としては自然な日本語に仕上げたいという思いが強いです。
さて、対する日本語の傾向は次のような具合です。
- 水ください。
- 水を。
- 水。
意味合いとしてはすべて「水をください」ですが、極端に短くしても、状況次第で通じるのが日本語です。逆に韓国語は、一つのフレーズに重複した表現を繰り返す傾向にあります。
誤解を恐れず言うのなら、韓国語から日本語に訳すときは、簡単すぎるくらいまで文章を削るくらいでちょうどいいです。
日本語から韓国語へ訳すときは漢字言葉をそのまま持っていかないこと
韓国語から日本語へ訳すときは、大胆に省略することが必要だということがわかりました。
それでは逆について考えてみましょう。
日本語から韓国語へ訳するときの注意は、ズバリ「漢字言葉を多用しない」ことだと考えています。
次のケースを見てみましょう。
- 恐縮です ⇒ 공축스럽습니다
- 恐縮です ⇒ 미안해요
韓国語で공축という言葉は、あるにはありますが、まずめったに使いません。あまりにも学術的で不自然だからです。
韓国語は、日本語と同じように、漢字由来の言葉があることから、日本人になじみやすい反面、漢字言葉を乱用すると、これまた翻訳臭の素になります。
日本語から韓国語へ訳すときは、積極的に漢字語以外を取り入れてみると、より自然な文章となります。
日本語から韓国語への翻訳は文字数以上に大変だと心得よう
日本語に比べて、韓国語は読むのも書くのも大変です。
それは漢字が混じるためです。
ハングルがすべて表音文字であるのに対して、日本語は表音文字と表意文字の複合体です。漢字が一字で多くの意味を伝えてくれるのに対し、韓国語は一音一文字なので、たくさんの文章を読み書きしないと意味が伝わりません。
また、文節ごとにスペースが混じるため、パソコンなどを使った翻訳作業では、キーを打つ回数が増えます。もっとも、これは変換が必要な日本語にも言えることですが、こちらは予測変換や短縮文字を使うことで克服できる一方、韓国語はごまかしがききません。単純にキーを打つ回数が増えます。
日本語の原文をみて「これくらいの量なら余裕だ」と思っていると、予想以上の分量に悩まされることがあるため、重々注意が必要です。
不自然だと感じたらオリジナルから変えてしまう勇気も必要
私が日韓翻訳を手掛ける中で気を付けているのは、一にも二にも「自然体」です。
特にマンガやドラマなど、キャラクターありきの翻訳では、そのシーン、その登場人物ならどのように言うか?を想像して、再構築しなくてはなりません。
だからといって、韓ドラの字幕のように、意味もなく変えすぎるのはあまり好きではないのですけどね。
直訳ばかりで、意訳をしないと「ちゃんとネイティブが翻訳したの?」と思われる節もあるため、複雑なところです。