現代のハングルは子音19、母音21で成り立っていますが、元々の子音は5音だったというお話があります。
この記事では、ハングルの成り立ちを踏まえて、ハングルで使われる子音の構造について簡単に解説します。
ハングルの子音は19個のはずですが…
少しでもハングルに触れたことがある人ならわかると思いますが、韓国語の子音は、次の通り19音あります。
発音種類 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
平音 | ㄱ く ぐ |
ㄴ ぬ |
ㄷ とぅ |
ㄹ る |
ㅁ む |
ㅂ ぶ ぷ |
ㅅ す |
ㅇ う |
ㅈ ちゅ ぢゅ |
激音 | ㅋ ク |
ㅌ トゥ |
ㅍ | ㅎ ふ |
ㅊ チュ |
||||
硬音(濃音) | ㄲ ク |
ㄸ トゥ |
ㅃ | ㅆ ス |
ㅉ チュ |
上の表の内容について異議を唱える韓国人は、少なくとも現代にはいませんが、果たして子音は5文字と言っているのは誰でしょうか?
このことについて韓国国立国語院では、次のように説明しています。
この記事の引用文は、次のサイトを参考にし、筆者が翻訳したものです。
まずは、子音をあらわす文字を見てみよう。子音をあらわす文字のうち基本的な文字は、該当する子音を発音するときに、もっとも重要な役割を担っている器官をかたどって作られたのである。
基本子音がかたどった発音器官の型(五音)
ㄱ 舌が口蓋に触れる型(牙音)
ㄴ 舌先が上前歯の裏に触れる型(舌音)
ㅁ 舌唇と上唇を閉じた型(唇音)
ㅅ 歯の型(歯音)
ㅇ 喉の型(喉音)
なるほど、確かに5音です。
ちまたで子音が5つという人は、おそらくこのことを言っているのでしょう。
ハングルの母音は口と唇の形、子音は喉と舌の形をかたどってできたわけですね。
残りの子音は、この5個の基本子音をもとに作られた。たとえば、子音ㄷ(てぃうっ)は、子音ㄴ(にうん)と同じ発音器官を使い、口内の同じ位置において発音されるのだが、ㄷがㄴよりも若干強い音を持つ。このため、ㄷはㄴをあらわす文字に、一画足して作られたのだ。ㅁ(みうむ)/ㅂ(ぴうぷ) ㅅ(しうっ)/ㅈ(ちうっ) ㅇ(いうん)/ㅎ(ひうっ) の関係も同様である。
つまり、五音以外の子音は、すべて子音の基本形からの派生形として設計されたのです。
日本語で言う「た」の段と「な」の同じ?と違和感を覚えるかもしれませんが、実際に나 다 と発音してみると、なるほど、喉の同じところを使っていることに気が付きます。
また、韓国語の子音には平音(例事音)、激音(有気音)、硬音(濃音)の区別がある。 /ㄱ/, /ㄷ/, /ㅂ/, /ㅅ/, /ㅈ/が平音、 /ㅋ/, /ㅌ/, /ㅍ/, /ㅊ/が激音、 /ㄲ/, /ㄸ/, /ㅃ/, /ㅆ/, /ㅉ/が硬音だ。ここからすぐにわかるように、同じ発音器官を使い、口内の同じ位置で発音される子音は、文字も似たような形で作られており、音同士の関係と文字同士の関係が連動している。平音をあらわす文字に一画足せば激音となり、平音を横に二つ並べれば硬音になるのである。
ㄱ(く)に棒を一本足すとㅋ(破裂音のク)になります。そして、ㄱ(く)を横に二つ並べるとㄲ(喉を詰まらせたク)になります。
このように、平音に一画足せば、の下りは、個人的に気に入っています。なんといっても習いやすい。
ハングルの子音は、発音ベースで19音ですが、実際は平音9文字だけ覚えてしまえば、後は応用するだけで習得できるのです。
また、ハングルは子母音をマスターすれば、どのような文字でも読めるのが大きな特徴です。
日本語は漢字を2,000から3,000覚えなければならず、中国語もしかり。英語も一見、アルファベット26種類だけマスターすればいいように思えますが、単語ごとの発音法則がまちまちで、結果として「読めない」字が出てきてしまいます。
一方、韓国語は基本となるハングルを覚えて、おおまかな発音法則さえ覚えてしまえば、誰にでも読み書きができるのです。
ハングルの子音が全部で5音というのは言い過ぎかもしれませんが、平音9音だけ覚えれば、その派生形も習いやすいのが韓国語のいいところですね。
平音以外の派生音については、別記事で解説します。
国語を習っているわけではないので「正統さ」にこだわることはない
本文中で解説した内容を全否定するようですが、言語学者にとってならともかく、ハングルの成り立ちや子音の数についての解釈は、韓国語の習得に役立ちません。
そもそもハングルは、15世紀の朝鮮王朝の王様が、平民にも習いやすいように、という親心から生み出したものです。当時は、文字といえば漢字であり、学のある官僚たちの独占物でした。ハングルが普及したおかげで、知識のない農民が文字を使いこなせるようになり、文盲率が劇的に下がったそうです。
ハングルは誰にでも習えるように設計された文字です。あえて難しく覚えようとしないで、表面的でもいいので素直に学習してみましょう。
韓国語を学ぶ外国人にとって大事な心構えは、あくまでも外国語として韓国語を学ぶことなのです。