ハングルには받침(パッチム)という概念の中に、겹받침(キョプパッチム)という子概念があります。
ちまたではダブルパッチムなどとも呼ばれているようですが、二重パッチムについてテキストにまとめながら、その存在意義について考えてみました。
二重パッチムが必要な理由について
日本語と韓国語を比べたとき、韓国語固有の文法概念として「パッチム」というものがあります。
少しでも韓国語に触れたことがある人ならわかると思いますが、いわゆる「終声」のことです。
通常、終声には子音記号があてられますが、異なる子音記号を並べて作るパッチムがあります。
それが、겹받침(キョプパッチム)です。「겹(キョプ)」とは「重なる、連なる」という意味です。
実例を挙げるとㄺとか、ㄵとかですね。全部で11種類あります。
- ㄱと同じ発音 ㄳ ㄺ
- ㄴと同じ発音 ㄵ ㄶ
- ㄹと同じ発音 ㄼ ㄽ ㄾ ㅀ
- ㅁと同じ発音 ㄻ
- ㅂと同じ発音 ㄼㅄ ㄿ
このうちㄼは、例外的にㄹともㅂとも発音します。ややこしいですね。
文法上の特性としては「通常のパッチムと同等の発声を持ちながら、後に続く子音に特殊な影響を与える」という点が、通常のパッチムと比べて特異です。
읽다なら익다、앉다なら안다と素直に書けばいいものを、なぜわざわざ表記を変えるのでしょうか?
昔から使われているからと言われればそれまでですが、私個人としては表記分けによるものかと思っています。次に例を挙げてみましょう。
- 익다(イッタ/熟す) 읽다(イッタ/読む)
- 안다(アンタ/抱く) 앉다(アンタ/座る)
上の両者はそれぞれまったく同じ発音を持ちますが、語彙としての意味合いが完全に異なっております。
また、次の読みも見てみましょう。
- 읽다(イッタ) 읽었다(イルゴッタ)
- 앉다(アンタ) 앉았다(アンジャッタ)
このように、二重パッチムを用いることで、文脈から語彙を推測しやすくなる効果があります。
韓国語は漢字を用いない言語なので、日本語に比べると単語の意味分けに神経を使います。
文章全体での解釈が重要となるため、同音語でも表記を分けることは、文脈全体の理解に役立つと言えるでしょう。
ダブルパッチムの登場機会は少ないけど、なかったら文章が紛らわしくなる
二重パッチムがなければ、紛らわしい韓国語文章ができてしまうので、より細分化する必要ができたのではないでしょうか?
普段は意識せずに使う言語でも、改めて他人に教えるようにまとめていると、新しい発見があるものですね。